全国的にほとんどの区間でデジタル化されている新幹線の無線ですが、山陽新幹線はかろうじてアナログが使われています。ただし、多重無線という特殊な方式が使われているため、一斉放送は受信できるものの、個別通話は思うように受信できません。
そこで、SDR#やIC-705などを使って手軽に受信できる方法を考えてみました。
山陽新幹線で使われている多重無線
山陽新幹線で使われている多重無線の概要は以下のURLに詳しく書かれています。
過去にこの方式の多重無線がほかの地域でも使われていたときには、受信装置を作った人もいます。
SDR#を使う
山陽新幹線の多重無線は、さきほどの装置を使わなくてもSSBモードを使えば復調できることはできるのですが、それほど頻繁に通話があるわけではなく、どこで通話が行われているかわからないのが難点です。そこでSDR#のウォーターフォール表示を見ながら受信すればよいのではないかと考えました。
実際に受信してみると、画像1のようになります。
真ん中の一番高いピーク(452.05MHz)を中心として、左右にそれぞれ小さなピークが19本あり、SSBで受信する際は左右のどちらかに合わせると復調可能です。通話が始まると画像2のように波形が変わります。
通話が行われている左右どちらかのチャンネルに合わせて、周波数を微調整すれば音声になります。
チャンネルと用途
周波数の組み合わせと受信モード、用途について表にまとめてみました。
周波数(左) | モード | 周波数(右) | モード | 用途 |
---|---|---|---|---|
451.967 | USB | 452.135 | LSB | 内線用 |
451.971 | USB | 452.131 | LSB | 内線用 |
451.975 | USB | 452.127 | LSB | 内線用 |
451.979 | USB | 452.123 | LSB | 内線用 |
451.983 | USB | 452.119 | LSB | 内線用 |
451.987 | USB | 452.115 | LSB | 通話未確認 |
451.995 | LSB | 452.107 | USB | 内線用 |
451.999 | LSB | 452.103 | USB | 内線用 |
452.003 | LSB | 452.099 | USB | 旅客指令 |
452.007 | LSB | 452.095 | USB | 旅客指令 |
452.011 | LSB | 452.091 | USB | 通話未確認 |
452.015 | LSB | 452.087 | USB | 通話未確認 |
452.019 | LSB | 452.083 | USB | 通話未確認 |
452.023 | LSB | 452.079 | USB | 内線用 |
452.027 | LSB | 452.075 | USB | 通話未確認 |
452.031 | LSB | 452.071 | USB | 内線用 |
452.035 | LSB | 452.067 | USB | 輸送・運用指令 |
452.039 | LSB | 452.063 | USB | 輸送・運用指令 |
452.05 | FM | 452.05 | FM | 一斉伝達 |
452.05MHzよりも右側(周波数が高い方)で受信する際は基本的にUSB、左側(周波数が低い方)ではLSBで復調できますが、途中からUSBとLSBが逆になるようです。左側でいうと451.987MHzと451.995MHzの間にある2本連続のピークを境に反転しているのではないかと予想されます。
チャンネル数は多いですが、使われているチャンネルはある程度決まっているようで、輸送・運用指令が2ch、旅客指令が2ch確保されているようで、これら4chはほかと比べて通話も多めです。一方で、内線用として使われているチャンネルは数が多く、優先的に使われているチャンネルというのはなさそうです。
またSSBなので、周波数はある程度微調整が必要かもしれません。IC-705のUSBの場合、上記の周波数から0.1kHz上(452.103MHzなら452.1031MHz)がベストでした。
待ち受け
SSBのためスケルチはかけられないのですが、SDR#に最初からついている「IF:Noise Reduction」を使えば、待ち受け時の雑音はほぼありません。また、IC-705の場合はノイズリダクションを入れればやはり雑音がほぼない状態で待ち受けできます。
また、通話が始まる前には呼び出しトーンのような音が鳴ったり、DTMFの音が聞こえたりするのですが、ほかのチャンネルで待ち受けをしていてもうっすらとそれが聞こえるので、それを手がかりにすればほかのチャンネルもある程度とらえられます。
その他
どの範囲が受信できる?
受信できる範囲についてはまだ調査中ですが、広島市内からだと福山~徳山間あたりの通話が受信できているのかなあという感じです。
あと知らなかったのですが、LCXも距離が離れるとだんだん弱くなるんですね。広島駅周辺は信号も強いのですが、広島市内から離れるにつれて信号が弱いです。
IC-705を使えばスキャンができるのでは?
IC-705を使えばSSBでも無理矢理スキャンができるのではないかと思ってやってみました。しかし、IC-705のデフォルト状態では通話時にほとんどSメーターが振れないため、スケルチがうまく開きませんでした。
そのため、プリアンプを入れて無理やりSメーターが振れるようにしたところ、今のところいい感じにスキャンができています。ただし、ノイズも増えるため一斉放送でスキャンが止まることもあります。もう少し工夫が必要です。
なお、IC-705の受信改造は、以下のURLやラジオライフ2021年5月号を参照しました。
tmishina's blog IC-705 を受信改造して鉄道無線や消防署活系を聞く
一斉放送時の波形
一斉放送の際の波形は画像3のようになります。個別のチャンネルに合わせておけば一斉放送も受信できるのかと思っていましたが、それはできませんでした。
まとめ
余命いくばくもないと思われる山陽新幹線の多重無線ですが、調べてみると面白いです。もっと早くからやっておけばよかったと少し後悔しています。LCXのため、受信できる環境はかなり限られますが、一度試してみてはいかがですか。