DJ-X100について実際に使ってみた感想を紹介します。
いいところ
まず、DJ-X100のよいところを紹介します。DJ-X100のすごいところは、地味に便利な機能が数多く用意されていることです。かゆいところに手が届くとはまさにこのことだなと感じる機能がたくさんあります。
他のデジタル受信機では聞こえないものが聞こえる
IC-R30やAR-DV1/AR-DV10(以下AOR機とします)、BCD436HPでは復調できないものがDJ-X100では復調できます。
T102/B54(NXDN)
まず、T102/B54(NXDN)については、ホワイトニングコード(WC)がどの数値でもDJ-X100なら復調できます。IC-R30はデフォルトのみ復調可能、AOR機では一部のWCのみ復調可能(放置モードという裏ワザを使えば復調はできますが面倒です)。BCD436HPに至ってはほぼ復調できないため、DJ-X100の優位性は明らかです。
T98(デジタル簡易・DCR)
T98(デジタル簡易・DCR)はIC-R30やAOR機でも復調可能なのでは?と思うかもしれませんが、個別通信モードを使っている場合は、AOR機ではうまく復調できません。また、データ通信が使われている場合には、IC-R30もAOR機もスキャンが止まってしまい地味に不便です。
しかし、DJ-X100は個別通信モードも問題なく復調できますし、データ通信は自動でスキップしてくれます。地味ですが重要な機能です。
DMR
IC-R30では復調不可能だったDMRが復調できます。ただし、BCD436HPのようなトランキングでは受信できません。また、AOR機やBCD436HPと同様に秘話がかかっている場合は復調できません。
受信機単体でACARSなどのデータ通信を表示できる
航空機が使っているデータ通信のACARSや船舶が使っているデータ通信AISなどは、これまでも復調自体はできていましたが、パソコンなどへの接続が必須でした。しかし、DJ-X100では受信機単体で復調が可能です。メッセージだけでなく、位置情報が含まれている場合も受信機のディスプレイに表示できます。
また、T102/B54でも位置情報やコールサインなどの情報が含まれている場合がありますが、DJ-X100ではこれも表示可能です。
さらに、拡張機能をオンにすることで復調可能な方式についても、位置情報やメッセージなどを表示できます。
リンクスキャンを複数設定できるなどスキャン構築が柔軟に行なえる
メモリーバンクを自由に組み合わせてスキャンできるようになるバンクリンクはそれほど珍しいものではありませんが、多くの機種は1つしか設定できませんでした。しかし、DJ-X100はバンクリンクを20組も設定できます。目立ちにくい機能ですが、使ってみると非常に便利です。
クイックリコールが素晴らしい
バンクリンクを複数設定できるだけでも、かなり便利なのですが、クイックリコールを使うとさらに便利になります。クイックリコールは表示画面やスキャンの状態などを記憶できるもので、テンキーの1~9を長押しするだけでそれぞれに記憶した状態を呼び出せます。
先ほども少し説明しましたが、DJ-X100では位置情報なども表示できますが、表示させるためには表示モードの変更が必要です。いちいち設定を変えるのは面倒ですが、クイックリコールを使えばすぐに切り替えられて便利です。
記憶できる内容の一例は以下のとおりです。
- VFOの場合:周波数、受信モード、通信設定、表示モードなど
- スキャン中:スキャンの種類
- 設定:各設定画面
VFOやスキャン状態だけでなく、設定画面ですら記憶できる点がすごいですね。たしかによく使う設定画面がある場合は便利かもしれません。
トーンスケルチやDCSを瞬時に解析できる
トーンスケルチやDCSを瞬時に解析できる機能は、BCD436HPやケンウッドのアマチュア無線機などでは実現できていましたが、IC-R30には搭載されていませんでした。
正確には、IC-R30にも一応トーンスキャンという機能はあるのですが、BCD436HPなどの瞬時解析を知ってしまうと、まどろっこしくて使いものになりません。
また、AOR機(AR-DV10)ではトーンスケルチもしくはDCSのどちらかしか解析できないため、中途半端な印象です。
アナログ無線は縮小していますが、まだまだトーンスケルチやDCSの解析機能は必要だと思います。
デジタル特有の音量の大小をある程度コントロールできる
デジタル無線は、しゃべっている人の声の大小がそのままボリュームに反映されることが多いように感じます。声が小さい人は何をいっているのかわからない一方で、声の小さい人にボリュームを合わせた状態で、声がでかい人がしゃべると鼓膜が破けそうになります。
しかし、DJ-X100ではこの音量差をある程度調節できます。極端に声が小さい(大きい)場合はさすがに難しいですが、鼓膜の許容範囲内には十分おさまります。この機能も地味ですが、デジタル受信機としては非常に重要な機能だと思います。
ダイヤルでスキャンを一時的にストップできる
スキャンを止めたい場合、普通の受信機はスキャンボタンをもう一度押すなど、何らかのボタン操作が必要です。しかし、気付くのが遅れた場合には間に合わないこともあります。DJ-X100では設定によりダイヤルを回すだけで一時的にスキャンをストップできます。再開はダイヤルをまた回すだけで、回す量は1クリック分だけでOKです。これもまた地味に使いやすい機能です。
よくないところ、改善して欲しいところ
非常に優秀なDJ-X100ですが、よくないところももちろんあります。しかし、その多くはささいなことです。
録音ができない
IC-R30やBCD436HPの優秀な録音機能に慣れてしまうと、録音がない受信機が非常に見劣りするようになります。特に外出中に受信するときは、車の運転などでまともに受信機の表示を確認できないこともあり、録音に頼らざるを得ません。DJ-X100に録音機能がないのは非常に残念です。
ファームウェアをアップデートしないと公式メモリ編集ソフトが使えない
DJ-X100の公式メモリ編集ソフトを使うにはファームウェアをアップデートする必要があります。しかし、アップデートにより拡張機能の一部が使えなくなります。ちょっとどうかなと思うやり方です。
復調できるはずのデジタル無線で復調できないものがある
IC-R30やAOR機で復調できるものが、DJ-X100で復調できない場合があります。私の環境ではT102のガス無線で、なぜか基地局のみホワイトニングコード(WC)が表示されず復調もできません。IC-R30でも復調できませんが、AOR機なら復調可能です。
また、453MHz帯で使われている自衛隊の連絡波もDJ-X100では復調できないようです。こちらも秘話が使われていない場合は、IC-R30やAOR機では復調できます。
シフトスキャンが今一つ
シフトスキャンとは、半複信・複信など2つの周波数を使う場合にそれぞれの周波数を確認してくれるスキャンです。この機能を初めて搭載したと思われるIC-R30では、スキャン中に2つの周波数を確認するだけでなく、スキャンが止まって再開するまでの間も、2つの周波数を瞬時に切り替えてくれる細やかさがありました。
DJ-X100にもシフトスキャンが備わっており、メモリーにシフト周波数を登録しておけば、自動で確認してくれるのですが、IC-R30のようにスキャンが停止して再開するまでの間は、シフトスキャンしてくれません。これは、IC-R30が優秀すぎるだけなのでしょうが、複信などで通話が続いているときは、続きが受信できなくなるので地味に不便です。
Funcキーが固い
DJ-X100の操作はFuncキーを押すことが多いのですが、そのFuncキーが固いです。また、サイドにあるため家や車など固定状態で使う際に押しにくいです。好みの問題かもしれませんが、固定で使う場合には前面にあったほうがよいと感じます。地味にイライラするポイントです。
裏ワザでキーの割当を変更すると少しマシにはなります。
T102/B54のデフォルトWCが228になっているため書き替えが面倒
T102/B54ではWCが変更されていることがしばしばあるため、デフォルトはオートになっていたほうが便利に感じます。しかし、デフォルトで228になっているため、書き替えないといけません。前述したように公式メモリ編集ソフトが使えないこともあり、この書き替えが地味に面倒です。
その他
その他、欠点とまではいえない点などを紹介します。
周波数カウンターはおまけ
DJ-X100には、直近で無線が使われていると周波数を解析できる周波数カウンター機能があるのですが、あまり反応はよくありません。この機能が優秀なのはBCD436HPのClosecallです。Closecallはある程度近くで無線が使われればほぼ反応してくれますが、DJ-X100はかなり近くでなければ反応しません。
例えば、私の自宅の前を消防車や救急車が無線を使いながら走行すると、Closecallはほぼ確実に反応しますが、DJ-X100の周波数カウンターは無反応です。あくまでおまけ程度の機能と思ったほうがよさそうです。
まとめ
よくないところもけっこうな項目数になってしまいましたが、録音ができないことを除けば、あとはささいなことばかりです。
今まで復調できなかったものが復調できるようになっているだけでなく、受信機として欲しい細かな機能が実によく練り上げられている非常に優秀な受信機です。その分、公式メモリ編集ソフトがファームウェアアップデートしないと使えない点などは、残念に感じます。